少しずつ暖かくなり始めて、昼間はなぜかウキウキとしてくるような、外でお弁当をつまみながら、家族で賑わいたくなるような季節となってきました。
とは言え、まだまだ不安定なのでもう少し、それはお預けとなりますが、そろそろこの時期になると『梅』の話が咲き始める頃です。
実は、元々『お花見』と言うのは、『奈良時代』からの習わしで、現存する最古の和歌集である『万葉集』では、『桜』を詠んだ和歌よりも、『梅』を詠んだ和歌の方が多くありました。
その後、『平安時代』になると『桜』の一瞬で散ってしまう、その美しさと儚さが『日本人』の心を奪い、『古今和歌集』になると、『桜』の方が多く詠まれるようになっていきました。
これは、『奈良時代』から『平安時代』に掛けての大陸から伝わった文化を、『日本』独自の文化や感性に変えていった時代の流れが、大きく関わっていることが分かります。
さて、そんな『お花見』に持参するものは、好きなお酒と好きな肴。
子供も大人も楽しめるものが良く好まれます。
そんなご飯のおかずにも、酒の肴にもなるものは、ほとんどが『彩(いろどり)』でも、茶色に偏りがちですが、中でもその『彩』を綺麗さと華やかさをくれるのが、『卵焼き』。
(上記は『ミツカン』ホームページ 「おいしいレシピ」から「だし巻き卵」を引用。)
学生時代にお弁当の中に入っている『卵焼き』には、毎日なことなのにどうしてもテンションが上がり、最後に食べたり、友達と交換したりなど思い出深い料理のひとつですが、それも実は奥が深い料理だったんです。
と言うのも、『卵焼き』には大まかに言って、俗に言う『だし巻き卵』と『厚焼き卵(江戸前卵焼き)』になります。
(上記は『東京すしアカデミー』公式ホームページより引用。)
『だし巻き卵』の方は関西地方が主流で、『関西風だし巻き卵』と言われることもあり、『厚焼きは関東地方、特に「東京」近郊が主流で、それゆえに『江戸前卵焼き』などと言われることもあります。
味付けも異なりがあり、『関西風』の『だし巻き卵』は、昆布をベースにダシを取ったものに、薄口醤油を合わせた、素材の味を活かすような味付けになり、卵にそのダシをたっぷりと入れた、ひと口食べると口の中でジュワーと溢れる料理になっています。
『厚焼き卵(江戸前卵焼き)』の方は、鰹出汁に濃口醤油を合わせ、そこに砂糖を混ぜた甘くて濃い味付けになり、『江戸前』独特の濃くてしょっぱい他の料理との間の『箸休め』のような料理になっています。
これには歴史的背景がありまして、「北海道」から昆布を運ぶのに、『天下の台所』と呼ばれた「大坂」に運ぶ方が比較的、スムーズに運ぶことが出来たことにあります。
『江戸時代』、車や飛行機が無い時代、大量の物資を運ぶのには、人の足を使った『飛脚』か、船で運ぶ事しかありませんでした。
そんな中で、昆布の産地である「北海道」から運ぶのには、「大坂」に集まる『西廻り航路』の方が適していたのです。
(上記は『2019年都立入試問題 改正』より引用。
その理由は、『江戸時代』以前から『日本海』側の航路が発展しており、経済力のある港が多かったこと。
また、冬以外は潮が安定しており航海がし易く、さらに潮の穏やかな『瀬戸内海』を航路にしていたことが大きな要因です。
このようにして、『天下の台所』・「大坂」に集まった「北海道」直産の昆布を利用して、ダシを取るようになっていきました。
それとは逆に『関東地方』では、『江戸幕府』開府以降、『全国』からたくさんの人たちが集まってきました。
その理由は、将軍家にお仕える『大名』たちが『江戸城』を中心として屋敷を築いたため。
3代将軍「徳川家光」の『参勤交代』により、原則として『江戸』と自国の領地とを一年交代で行き来しなければなりませんでした。
そうなると、『大名』の屋敷の他にも家来の移住地も必要となってきます。
それを建設する『大工』が必要となるので、跡継ぎで無い、仕事の無い二男・三男などの男たちがドンドン集まってきたんですね。
また、当時はまだ全てが木材での建設です。
だからちょっとした火の後始末の不注意で、すぐに火事になってしまったんです。
『江戸の三男』と呼ばれた3大人気職業で、『火消し』・『力士』・『与力』が不動の地位を誇るのも、当時いかに火事が多かったと言う事が分かりますね。
そして、火事になった建物はまた建て直さなければ行けません。
だから、『大工』がより必要であり、『江戸』の発展によってさらに肉体労働者が増えていったんですね。
そして、そんな肉体労働は『高温多湿』の気候である『江戸』ではたくさんの汗をかきます。
だから、塩分摂取が不可欠であり、そこから濃い味付けの「蕎麦」などが好まれていったんです。
ただ、濃い味付けだけでは口が飽きてしまいます。
そこで、滋養に効き当時、非常に高価だった「卵」に砂糖を入れて甘くし、お口直しにとして人気になり、定番となっていったんです。
また、『卵焼き』を焼く道具も、『関西地方』と『関東地方』ではその形が違い、『関西地方』の卵焼き器は西型・もしくは角長型と呼ばれており、長方形になります。
逆に『関東地方』の卵焼き器は東型・もしくは角型と呼ばれており、正方形になっています。
現在の一般家庭で使用されているのは、ほとんどが長方形の西型となっており、正方形の東型はほぼ全てが業務用として販売されています。
そんな子供から大人まで人気な『卵焼き』。
これからの行楽シーズンに必ず持寄りたい料理のひとつですね。