芹沢派を一掃して、『新撰組』を掌握した試衛館組は「近藤勇」を中心に京都の警備をしていました。
とは言っても、『京都御所』や『二条城』などを警護するのではなく『祇園』周辺などの警護を担当していました。
と少し話は戻りますが、芹沢鴨を宴会に誘い出した「角屋」と言う料亭。
そして江戸時代の支払い方法も、面白いんですが、一般的には「ツケ」になっていました。
それも回収するのは『お盆』と『大晦日』のみ!
なのでその日に回収が出来ないと、また半年後の回収になってしまったんですね。
店側も誰がいくら購入したと言うのを「台帳」に記しており、それを元に集金をすると言うシステムが一般的でした。
ここで生まれた言葉が「徳政令」などで借金をチャラにすることを「帳消し」と言いいます。
まさに台帳に書いてたのを消さなければいけないと言う、店側に取ってみれば相当厳しいものでした。
今でも使われている言葉がこのような形から出来たと思うと、面白いですよね!
さて、話は戻りますが、長州藩や薩摩藩などの志士たちはこの「ツケ」のシステムで、料亭などに通っていました。
しかし、新撰組は「ツケ」の支払いがダメだったと言うのをご存知でしょうか?
各藩士たちは身元も分かっていて信用性が高い。
一方、新撰組は「烏合の集」、いわゆる寄せ集めみたいな奴らなのでと思った方もいらっしゃると思いますが、実はそうではありません。
不逞浪士の見回りなど京都の治安維持が任務の彼らは、いつ何時死んでもおかしく無い状態でした。
死んだ人からは集金が出来ないですもんね。
そんな彼らを一躍有名にしたのが題名にもある『池田屋騒動』です。
『八月十八日の政変』で失脚した長州を支援していると言う情報を聞きつけた『新撰組』は炭薪商をしていた「古高俊太郎」の存在を突き止めます。
そして、店の中を捜索中に大量の武器と長州と繋がっていた手紙を発見。
すぐに捕らえ、古高を拷問にかけた「土方歳三」はとんでもない事を耳にします。
それは「祇園祭の前の風の強い日に、京の街に火を放ち、その混乱に乗じて松平容保・一橋慶喜を暗殺。さらに、孝明天皇を奪い、長州に連れて去ろう」と言う計画でした。
そして、この古高を奪還すべく、長州・土佐・肥後などの『尊皇攘夷派』の志士たちが「池田屋」か「四国屋」どちらかで襲撃をするかしないかと言う会合があると言うことも突き止めました。
そして、祇園祭の宵山の夜、現在の『八坂神社(やさかじんじゃ)』近くの祇園の会所に集まった新撰組の隊士達が近藤組と土方組に別れて、捜索が始まりました。
当時の状況からすると、どうやら片っ端からしらみつぶしに当たっていたみたいですね。
そして、池田屋で発見した近藤組。
が『御用改め』として踏み込み、残りの隊士は外を固めました。
この時に舞台や映画などで有名な「階段落ち」(実際にはフィクション)が始まりであり、ここから壮絶な奮闘が繰り広げられます。
尊皇攘夷派は約20名、対して新撰組は4名となると明らかに不利な状況と思いますが、試衛館組の4名ですので、少数先鋭でさらに普段から真剣を使い日々鍛錬していた、彼らにとってはこっちの方がやりやすかったのではないかと思います。
そんな中、過激尊皇攘夷派の中心人物であった「宮部鼎蔵(みやべていぞう)」や吉田松陰の門下生で、久坂玄瑞・高杉晋作・入江九一とともに『門下四天王』と称された「吉田稔麿(よしだとしまろ)」も必死に応戦しましたが、のちに自刃。
藤堂平助も油断していた鉢金を外した時に額を斬られ、一時は近藤勇、永倉新八の2人のみが戦闘が出来ると言う状態になってしまいました。
その後、すぐに土方組も駆けつけて数で有利になった新撰組は、次々と過激尊皇攘夷派の志士たちを捕縛していき、終焉を向かえます。
終焉後には会津藩や桑名藩も駆けつけてますが、手柄の横取りをされないようにと土方は一歩も近づけさせなかったと言うくらい、圧倒し奮闘していた様子が分かります。
また、桂小五郎も池田屋におり、新撰組到着後、すぐさま屋根から逃げた説や、池田屋に桂が到着した時間が早くまだ、会合が出来るほどの十分な人が集まっていなかったので、いったんここを出て対馬藩邸に行っている間に、事件が起きたと言う説があります。
いずれにしても難を逃れた桂小五郎はのちに『薩長同盟』を始め、『維新の三傑』となって時代を動かしていく様になります。
また、この事件が維新を10年遅らせたとか逆に早めたなど、言われていますが当時、火を放つなど尊皇攘夷派はテロ。
そのテロ行為を未然に防ぎ、また京都の治安を護った新撰組はこの事件がきっかけで、一気に天下に名を轟かせるようになります。
また、近くには長州藩邸(現在の京都ホテルオークラ)や土佐藩邸なども近くにあるなど、のちに時代を動かす事になる人物たちが、この周辺に、集まっていたことが分かります。
さて、次回はこの事件がきっかけで起きた『禁門の変』についてお伝えしていきたいと思います。